映画『戦艦ポチョムキン』



 ニコニコ動画のロシア特集でタイムシフト予約しておいた、『戦艦ポチョムキン』を見たのでメモ。
 淀川長治さんの声が懐かしくて、それだけで感動が。最後にもいつもの欲しかったなー。

 この手のプロパカンダ的な作品を作らせたら今も昔も上手いな、ロシア。
 酷い扱いや不正に憤った下士官たちが、悪徳な上官を追放して艦を乗っ取る、というハリウッド作品にも多数ある筋ではあるのだが、それが地上の住民たちをも突き動かしたりするあたりにスケールの大きさを感じさせる作品。
 セルゲイ・エイゼンシュテイン監督の長編第2作目に当たり、「第1次ロシア革命20周年記念」として製作された背景を持つ作品でもある。
 1905年に起きた戦艦ポチョムキンの反乱という史実を踏まえてはいるが、色々と脚色されており史実そのままとは言えないのだそうだ。


 時代は帝政末期。時代は変わろうとしていたが、戦艦乗りたちの毎日はいつもと変わらず下劣であった。
 6月の朝、オデッサ近くに停泊する戦艦ポチョムキン。その甲板に吊されていた水兵用の備蓄食糧肉に蛆が湧いていることに気が付いた水兵たちは強く抗議するが、艦の士官ギリヤロフスキー(グリゴーリ・アレクサンドロフ)は取り合わない。更には軍医までもが蛆の湧いた肉にお墨付きを与える始末だ。
 結局はその肉を使った料理が供されることとなったが、全く納得出来ない水兵たちはこれを拒否。それに怒ったギリヤロフスキーたち士官たちは彼ら全員を甲板に集め、命令に従わなかった罪として衛兵に銃を向けさせる。
 緊迫した空気が変わったのは、水兵の一人ワクリンチュク(アレクサンドル・アントノーフ)の言葉。「兄弟たち、誰を撃つつもりなんだ」。
 その言葉に押された衛兵たちは銃を下ろすが、ギリヤロフスキーは激怒。自分の手で処刑を続行しようとするが、しかしワクリンチュクたち水兵は数で勝っていた。
 戦艦ポチョムキンは水兵たちにより掌握されるが、しかしワクリンチュクはギリヤロフスキーにより殺されてしまった。彼の死を悼んだのは水兵たちだけではなかった。彼の葬儀にはオデッサ中の住民が訪れた。

 彼ら水兵に対する深い同情が満ちるオデッサに、反乱の報を受けた正規軍が踏み込む。
 闘う術を持たぬ住民達は逃げ惑い、正規軍は遠慮無く街を血で染めていく。更には戦艦ポチョムキンにも黒海艦隊が差し向けられるとの噂がもたらされ、水兵達は降伏が抗戦かで激しく意見を戦わせる。
 徹底抗戦を決めた戦艦ポチョムキンは、たった1隻で艦隊に対峙する。絶望的な緊張感が満ちるなか、ポチョムキンの水兵たちが聞いたのは―。



 オデッサの街は見殺しなのかよ、とか割とツッコミ所はあるのだが、ワクリンチュクの葬儀に訪れる人並みの凄まじさや、その後何度も何度もパロられるオデッサの階段での一幕、戦艦ポチョムキンに集まる舟の多さや、戦闘準備に走る水兵たちの後ろで駆動する戦艦各部の説得力などが非常にカッコイイ。
 人海戦術と予算の豊富さを感じる。この妙な壮大さの系譜は今も感じることが出来るが。
 戦艦ポチョムキンの本物は既にお亡くなりになっており、この映画は模型は他の艦での撮影を継ぎ接ぎして作られているそうだが、上手く処理されていてタイトルに恥じない。
 しかし本当に最後の緊張感の作り方は上手いなー。


 上は当時のソ連での宣伝ポスター。
 ソ連さんのこの謎の格好良さよ。
 


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