マリインスキー・バレエの「ロミオとジュリエット(プロコフィエフ)」を観に行ったのだ




 11月21日に見たマリインスキー・バレエの「白鳥の湖」が楽しかったので、翌日の22日の「ロミオとジュリエット」も観に行ったよ。
 「白鳥の湖」は演者の殆どが女性だったが、「ロミオとジュリエット」は男性が多め。戦闘シーンも迫力があって、ちょっと感動した。
 が、前日の「白鳥の湖」と比べるとお客さんの入りはイマイチ。舞台装置には「ロミオとジュリエット」の方がお金が掛かっているように思えるのに、ちょっと勿体ないかなーとか要らない心配をしてしまった。
 でもハッピーエンドの「白鳥の湖」の方が、悲劇で終わる「ロミオとジュリエット」よりも人気があるのも分かる。二人の死によって両家の確執が解消される、って展開は正直間抜けな感があるものね……って、別にシェークスピアを批判するつもりはないのだけれど。


 この「ロミオとジュリエット」は、ラブロフスキー版がマリインスキーで1940年に初演された。
 他の版もこのラブロフスキー版が元になっているそうな。



・第一幕
 ヴェローナの広場には様々な人間が集まり、賑やか。そこにモンタギュー卿の息子ロミオが通りかかる。
 そこにやって来たのはキャピュレット卿の甥ティボルト、明らかに泥酔している。ロミオの友人ベンヴォーリオを見た途端、ティボルトは剣を取り襲いかかってきた。
 ティボルト、ベンヴォーリオ双方に仲間が駆けつけ、キャピュレット家とモンタギュー家の戦いが始まった。広場の平和的な雰囲気は消え失せ、剣と剣が打ち合わせる音が響き渡る。
 そこに割って入ったのは、ヴェローナの大公。その介入により、争いは中断される。大公は両家の人間に向かい、今後武剣を手に取ったものを処罰すると厳しく言い渡すのだが、しかし大公が去った直後には既にモンタギュー家とキャピュレット家の争いは再開されるのだった。

 キャピュレット卿の娘ジュリエットは舞踏会のために着替えようとしていた。それを手伝いに来た乳母に、ジュリエットはじゃれ付く。
 その子供っぽい娘の姿を、母親は叱るのだった。

 キャピュレット卿のところで盛大な舞踏会が開かれることを知ったベンヴォーリオとマキューシオが、ロミオを誘いにやって来た。モンタギュー家と激しく反目するキャピュレット家の舞踏会に紛れ込むため、彼ら三人は仮面を身に付けた。
 忍び込んだキュピレット家では、ジュリエットが婚約者のパリスと踊っていた。その姿に一目で恋に落ちたロミオ。
 一方のジュリエットも、その仮面が落ちた彼の素顔を目にし、一瞬で恋に落ちたのだった。
 だがロミオら三人が舞踏会に紛れ込んでいることが発覚してしまい、三人は逃げ出す。

 舞踏会の後、ジュリエットが一人バルコニーでロミオのことを思い出していると、なんとそこにロミオが現れた。
 ジュリエットに愛を誓うロミオ。二人は永遠の愛を誓い合った。


・第二幕
 舞台は再びヴェローナの広場。人の多いその場所で、ジュリエットの乳母からロミオは手紙を受け取った。送り主は勿論、ジュリエットだ。
 それはジュリエットがロミオの求愛に応じることを意味していた。

 喜びに満ちたロミオは、隠遁生活を送るローレンス神父の元を訪れた。秘密裏に結婚式を挙げて欲しいと依頼するためだ。
 二人の結びつきがモンタギュー家とキャピュレット家との確執を解消することを期待した神父は、ロミオに協力する。
 ジュリエットとロミオの二人は、こうして密やかな式を挙げた。

 広場では、ティボルトがベンヴォーリオとマキューシオに気が付き、剣を抜いていた。丁度そこに通りかかったロミオは、両家の争いを収めようと間に割って入る。
 だがその行為が仇となった。ロミオの隙をついて、ティボルトがマキューシオを刺し殺したのだ。
 激昂したロミオは、思わず剣を取り、ティボルトを殺害してしまった。キャピュレット卿の甥殺しは重大だ。ロミオはヴェローナから逃げ出さざるを得なかった。


・第三幕
 ロミオがジュリエットに別れを告げに訪れる。悲しみに暮れるジュリエット。乳母の慰めも、今の彼女には届かない。
 そんな彼女の元に、何も知らぬ両親が訪ねて来た。上機嫌だ。それもそのはず、ジュリエットに婚約者であるパリスとの結婚の日取りが決まったと告げに来たのだから。
 花束を手にしてパリスがやって来た。微笑んでジュリエットに花束を差し出すが、ジュリエットは浮かぬ顔で受け取ろうともしない。首を傾げるパリスに、ジュリエットはきっぱりと拒絶を告げるのだった。
 状況が理解出来ないパリス。怒り狂う両親。狼狽える乳母。
 収拾の付かない事態に困り果てたジュリエットは家を抜け出し、ローレンス神父に助けを求める。

 ジュリエットから相談を受けたローレンス神父は、彼女に薬を手渡した。この薬を飲めば一時的な死がもたらされると言う。
 キャピュレット卿の娘であるジュリエットが死んだならば、その体は一族の霊廟に葬られるはずだ。葬儀が終わった後、薬の効果が切れる頃にロミオが迎えに行けば良い。そして二人で新たな生活のために旅立つのだ。

 ジュリエットが家に戻ると、彼女がこっそりと抜け出したことは既に発覚していた。両親の怒りは更に増す。
 ジュリエットはその勢いに押されたふりをして、従順を誓った。そしてベッドで悲しみに耽っている態を装って、神父から渡された薬を呷るのだった。
 ジュリエット結婚の報を受け、事情を知らぬ彼女の友人達が祝いに訪れる。そしてベッドの上で死んでいるジュリエットを発見、大騒ぎに。

 ロミオは苦悩していた。ヴェローナから逃げ出して後、ジュリエットと連絡が取れないのだ。
 ようやく訪れた使者、それは友人のベンヴォーリオだった。彼からジュリエットの死を告げられたロミオは半狂乱に陥る。急いでヴェローナへと戻るロミオ、彼がジュリエットの計画を知ることはなかった。

 キャピュレット家の霊廟で、ジュリエットの葬儀がしめやかにしかし豪華に行われていた。父が母が婚約者のパリスが悲しみに項垂れ、静かに立ち去っていく。
 その後に駆けつけたロミオは、ジュリエットの姿を目にして絶望する。
 ジュリエットが目を覚まして見たのは、己の短剣で胸を突いて絶命しているロミオの姿であった。全てを理解したジュリエットは、ロミオの短剣を取り上げると彼の後を追った。
 ジュリエットの葬儀を知ったモンタギュー卿は、彼女の死を悼むためにキャピュレット家の霊廟を訪れていた。戻って来たキャピュレット卿と二人で目撃したのは、それぞれの子供の死であった。
 同じ痛みを共有するモンタギュー卿とキャピュレット卿は、互いに手を取り合う。こうしてロミオとジュリエットの死によって、両家の確執は解消されたのだった。



 先にも書いたが、この「ロミオとジュリエット」は男性陣が格好いい。二派に別れての集団での戦闘シーンとか、もう本当に素敵。
 加えて感情表現が豊かなのも良い。ロミオがジュリエットに一目惚れする一瞬とか、ジュリエットがロミオと恋に落ちる瞬間とか、逆にパリスがジュリエットに拒絶されて狼狽える気持ちなどが、歌も台詞もないのに見ている側にも素直に伝わってくる。
 台詞なんて一言もないのに、なんとも不思議。


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