映画『裁かれるは善人のみ』


(画像は公式サイトのスクリーンショット)

 フライヤーにも使われているこのシーン、とっても綺麗なのだから、公式サイトでもYouTubeを貼り付けずに見せて欲しいぞ。

 この映画、上映時間までに間があったので、映画館の壁に貼られていた批評をのんべんだらりと読む暇があった。そこには「ロシアの若手監督に比べればアンドレイ・ズビャギンツェフのロシア批判はかなりソフトだ」と書かれていたので、へーそうなのかーと思いつつ見たのだが、いやいや、これでソフトとかどういうことだよ!
 悪巧みする市長の後ろに思いっきりプーチンさんの写真掲げてあるんですけど! カメラのアングル的に、まるでプーチン自身が悪巧みをしているみたいなんですけど!
 加えて、意外と信心深い腹黒市長の相談役たるロシア正教のお偉いさんも、悪い意味で凄いぞ!
 ソフト……ソフトってなんだ。



 原題は《ЛЕВИАФАН》。リヴァイアサン。
 トマス・ホッブスによる書籍『リヴァイアサン』、あるいは、旧約聖書に登場する海の怪物、悪魔とも解釈される存在。

 昔は栄光を極めた港町。だが今は、単なる田舎だ。
 都会から遠く離れたその地で、コーリャ(アレクセイ・セレブリャコフ)は自宅に設けた工場で自動車修理業を営んでいる。家族は随分と年下の二人目の妻リリア(エレナ・リャドワ)と、前妻との間に設けた息子ロマ(Sergey Pokhodaev)の二人。反抗期に差し掛かっているロマと、リリアの折り合いはお世辞にも良いとは言えない。

 そんな平和な暮らしをしているはずのコーリャは、今、法廷闘争を仕掛けていた。訴える相手は市。代々住み続けてきた自宅が、市長(ロマン・マディアノフ)によって奪われかけているのだ。
 コーリャの持つ土地に、市長は大規模な施設を建てようと計画していた。断固反対するコーリャはモスクワから軍隊時代の後輩、現在は弁護士をしているディーマ(ウラディミール・ヴドヴィチェンコフ)を呼び寄せた。
 このディーマが一気に体勢を変える。彼がコネを駆使して手に入れてきたのは、市長の真っ黒な過去情報。それを武器にディーマは市長を脅迫、いや、温和な話し合いの舞台へと釣り出しにかかる。
 危機感を抱いた市長は、なりふり構わぬ攻勢に転じるのだった。

 一方、田舎街での閉鎖的な生活に疲れたリリアは、都会から来たディーマに惹かれて行き……。 



 バッドエンドなんだろうなーとは思っていたが、想像を絶するバッドエンドっぷりで、なんかもう言うことないです……。
 しかもそれを引き起こす最後のトリガーとなるのが、リリアと言うのがまた救えない。この田舎街に愛着を感じて必死に留まろうとするコーリャに対して、新しい生活を求めるリリア、この二人のすれ違いが最終的な悲劇を引き起こす。
 とは言え、市長の悪役っぷりも凄い。本当に凄いよ、市長。こんなクッソ田舎の市長に過ぎないのに、なんか凄い権力持ってるよ。どういうことなんだよ。田舎だけど実は財政めっちゃ潤ってるのか。
 とまぁ、そんな釈然としない気持ちになれる映画でした。
 更に今、公式サイトを見ていたら、この映画がキッカケでリリア役の女優とディーマ役の俳優さんが結婚してた! よりによってその二人かよ、と変な笑いが出てしまった。いや役柄の演者は関係ないですけどね。


 ちなみに、主役のコーリャさん、このコーリャというのは愛称。正しくはニコライ。
 コーリャの友人であるディーマも愛称。正しくはドミトリーさん。
 日本語字幕では全てコーリャにディーマだが、作中では結構色々に呼ばれている。聞いていると面白い。でもロシア特有(でもないのかもしれないが)のこの名前の仕組み、外国人には理解出来ないよぅ……。


 ちなみに・その2。
 コーリャの友人の警官父子が乗っているパトカー的なものに書いてある文字дпс。
 Дорожно-патрульная службаの略称で、つまり……よく分からなかったが、交通警察的な?
 
 


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