試訳の裏側:アンドレーエフ「イヴァン・イヴァノヴィッチ 4/7」

2015年10月08日更新


 元の作品は二章しかないのだが、私の都合で七分割。今回は二章の頭1/4をお送りします。

出典は以下:
《ТОМ 3. ПОВЕСТИ, РАССКАЗЫ И ПЬЕСЫ 1908-1910》収録《Повести и рассказы》項目内《Иван Иванович》(БИБЛИОТЕКА РУССКОЙ КЛАССИКИサイト内、Леонид Николаевич Андреевのページより)


今回も、
  『岩波ロシア語辞典』(岩波書店)
  『NHK新ロシア語入門』(日本放送出版協会) にお世話になりました。
加えて『ロシア文学鑑賞ハンドブック群像社)、『現代ロシア話しことば辞典(NISSO)にもお世話になりました。

 例によってツッコミ等は歓迎しております。
 以下は、いつもの七転八倒な和訳への道。


注:色つき文字部分は、私(春色)の独り言。
太字は原文、もしくは最終的な日本語訳。



II

В действительности народу было много, работа шла веселая и живая, и Иван Иванович долго не мог никуда приткнуться. Пробовал и тащить, и подпихивать, и вязать проволокой, но все у него выходило не так, и его прогоняли. Просто он не понимал назначения баррикады, – она казалась ему странной и нелепой игрушкой, сооружаемой какими-то баловниками для непонятного баловства, и что нужно сделать для того, чтобы она стала лучше, он не догадывался.

メモ
действительность(←действительности:前置格):実在する事物、事実;現実、実際
в действительности:実際には、現実には
весёлый(←веселая:女性形):楽しい、愉快な、陽気な;楽しそうな
долго:長らく、長い間
никуда:[否定]どこへも(…ない);(口)まずく、悪く、[述]悪い、役に立たない
приткнуться:(口)密着する、もたれ掛かる;(密着して狭いところに・不便なところに)位置する;(俗)(不便なところに・どうにか)身を置く、場所を取る、落ち着き場所を見付ける(完了体)
 →不完了体:притыкаться
пробовать(←пробовал:過去形、男性形):кого-что試す、テストする;試みる、務める、…してみる(不完了体)
 →完了体:попробовать
тащить:[定]引っ張って動かす、引き摺る(不完了体)
 →[不定]таскать
подпихивать:(ふつう脇・後ろから)少し押しやる、押して動かす(不完了体)
 →完了体:подпихнувать
вязать:束ねて[集めて]縛る;縛る、束縛する、拘束する;編む(不完了体)
 →完了体:связать
проволока(←проволокой:造格):針金、ワイヤー;(口)鉄条網
выходить(←выходило:過去形、中性形):(ある場所から)出る(不完了体)
 →完了体:выити
прогонять(←прогоняли:過去形、複数形)кого-что追い立てて行く、駆り立てる、(口)通過させる;追い出す、追い払う、(口)首にする、(口)払いのける(不完了体)
 →完了体:прогнать
назначение(←назначения:生格):指定、決定;任命、辞令;任務、用途
нелепый(←нелепой:女性形、造格?):常識外れの、話にならない、無意味な、馬鹿げた;不格好な、みっともない、無様な
игрушка(←игрушкой:造格):玩具、おもちゃ;慰み、気晴らしの道具
сооружаемый(←сооружаемой:女性形、造格?):受動形容分詞現在
 →сооружать:(大きいもの・複雑なものを)造る、建設する、建築する、築き上げる(不完了体)
  →完了体:соорудить
баловник(←баловниками:複数形、造格):(口)いたずらっ子、腕白、甘えん坊、だだっ子
непонятный(←непонятного:生格):理解できない、不可解な、分かりにくい、不明瞭な、正体不明の、得体の知れない
баловство(←баловства:生格):甘やかし、猫かわいがり;腕白、悪戯
догадываться(←догадывался:過去形、男性形):(何かの徴候によって)推量する、気付く、感づく、察知する(不完了体)
 →完了体:догадаться

「実際には人々は多く、仕事は楽しく生き生きと行われ、そしてイヴァン・イヴァノヴィッチは長らくどこへも落ち着き場所を見付けることが出来なかった。試した引っ張って動かすことを、押して動かすことを、そして針金で縛ることも、しかし彼の全ては出て行ったここからではなく、彼を追い立てた。ただ彼だけが理解出来なかったバリケードの用途を、―それは彼には感じられた奇妙な馬鹿げた玩具、造られたどこかのいたずらっ子によって理解不能な悪戯のために、このために造る必要があった、彼女をより良くするために、彼が推量できないような」
 後半の意味が分からない。イヴァンさんが役立たずなのは分かるが。そもそもバリケードってどうやって造るもんなんだ?
実際には人員は多かった。仕事は楽しく生き生きと行われていたが、イヴァン・イヴァノヴィッチだけは長いことどこにも落ち着き先を見付けることが出来なかった。引っ張ったり押したり、針金を縛ってみたりしたのだが、しかし彼のやること全ては上手く行かず、追い払われてしまったのだ。ただ彼だけには分からなかったのだ、バリケードの用途が。彼にはバリケードが奇妙で馬鹿げたオモチャ、理解不能な悪戯のためにどこかの腕白坊主によって造られたもののように思え、どのようにして造らねばならないのかなど彼には想像も付かなかった
 もう限界です。


 И вид имел бестолковый, растерянный и даже печальный, так как очень беспокоился к тому же за пальто. Одну полу он уже успел испачкать, и по серебристому сукну проходила скверная, темная полоса. Подумал – и пошел жаловаться к Петрову.

メモ
иметь(←имел:過去形、男性形):持つ、有する(不完了体)
бестолковый:物分かりの悪い、愚かな;分かりにくい、支離滅裂な、混乱した、訳の分からぬ
растерянный:(人が)平静を失った、茫然自失した、途方に暮れた;(表情などが)茫然としたような、途方に暮れたような
печальный:(人が)悲しみに沈んでいる、悲嘆に暮れた;悲しい、悲しげな、悲しみに満ちた
так как:…なので、…だから
беспокоиться(←беспокоился:過去形、男性形):心配する、案ずる、不安に思う;構う、気を使う、世話を焼く(不完了体)
к тому же:それに加えて、その上に
пола(←полу:対格):(前開き衣服の)裾
успеть(←успел:過去形、男性形):инф.сов間に合って…できる、…する間がある、ある期間内に…する(完了体)
 →不完了体:успевать
испачкать:汚す、汚くする(完了体)
 →不完了体:пачкать
серебристый(←серебристому:与格):銀色の
сукно(←сукну:与格):ラシャ
проходить(←проходила:過去形、女性形):(人・乗り物などが)通る、通行する、通りがかる、(ある場所まで)通って行く(不完了体)
 →完了体:пройти
скверный(←скверная:女性形):嫌な、嫌らしい、不快な、醜い、汚い
темный(←темная:女性形):暗い、薄暗い、闇の、暗黒の;暗色の、黒っぽい、くすんだ
полоса:帯状の物;(模様などの)しま、ストライプ、筋
подумать(←подумал:過去形、男性形):ちょっと[しばらく]考える;(…について)考える;инф…しようと思う(完了体)
жаловаться:…を訴える、…のことでこぼす、…が不満である;(口)…のことを告げ口する、…の悪口を言う(不完了体)
 →完了体:пожаловаться

「顔つきは混乱して途方に暮れており、悲嘆に暮れてさえいた、なので大いに心配なのはその上にコートのことだった。一つの裾を彼は既に汚してしまう間があり、銀色のラシャの上を走っていた汚い黒っぽい縞が。考えた―訴えるために行ったペトロフのところに」。
 いやもうだからコートのことは諦めろって。そしてイヴァンさんに厳しい態度のペトロフに相談するのかよ。
その顔つきは訳も分からずに途方に暮れた態で、悲嘆に暮れてさえいた。大いに心配なのは何と言ってもコートのことであった。裾の一部をもう汚してしまったし、銀色のラシャの上に汚い黒っぽい横筋を付けてしまった。考えて――不満を零すためにペトロフのところへ行った


– Не знаешь? – презрительно сказал тот. – Видишь вон столб телеграфный? Ступай и пили.

– Да у меня и пилы нет.

– Поищи.

メモ
презрительно:軽蔑的に、蔑むように;(廃)軽蔑すべき、卑しむべき
столб:柱
ступать(←ступай:命令形):一歩を踏み出す、一歩進む、(ある場所へ)立つ(不完了体)
 →完了体:ступить
ступай(те):歩け、行け、進め、去れ
пиля(←пили:生格):分解者
пила(←пилы:複数形):のこぎり、(刃がギザギザの)パン切りナイフ、爪やすり
поискать(←поищи:命令形):(しばらくの間)探し求める、探索する(完了体)

 ペトロフとイヴァンの間で齟齬が生じているような。
「『知らないのか?』 蔑むように言ったのはその人。『見ろよあそこに電信柱があるだろう? 行けよ、のろま』
『ああ、私のところにはノコギリがないからな』
『探せ』」
 でもなんで電信柱? →バリケードの材料になるそうな。良いのか倒して、電信柱。
『分からないのか?』 蔑むようにその人は言った。『見ろよ、あそこに電信柱があるだろう? 行けよ、のろま』
『ああ、でもノコギリがないからさ』
『探すんだな』


И опять его гоняли от одного к другому, но наконец нашел пилу и даже подручного для работы, какого-то старого рабочего.

– А ты бы шинель-то снял, – посоветовал рабочий. – Пальто хорошее, жалко, как испортится, да и работать легче.

メモ
гонять(←гоняли:過去形、複数形):[不定]追う、せき立てる、駆り立てる、追跡する、追い出す(不完了体)
 →[定] гнать
наконец:ついに、とうとう、やっと、結局;[挿入語]さらに、かつまた、その上に;[挿入語](強い不満・いらだちを表して)もういい
подручный(←подручного:生格):常用の、手近な、身近にある
старый(←старого:生格):年老いた、高齢の、老年の
рабочий(←рабочего:生格):労働者
шинель:(軍人・学生・官吏のための背に襞とベルトの付いた)制服外套;(19世紀の)インバネスコート
снять(←снял:過去形、男性形):(上・表面から)取る、降ろす、外す(完了体)
 →不完了体:снимать
посоветовать(←посоветовал:過去形、男性形):助言する、忠告する、勧める(完了体)
 →不完了体:советовать
испортиться(←испортится:現在形、三人称単数形):駄目になる、壊れる、汚れる、腐る;悪くなる、不愉快なものになる(完了体)
 →不完了体:портиться
легко(←легче:比較級):軽々と、軽快に、軽く;容易に、やすやすと

「そして再び彼は追い立てられた一つから他のところへと、しかし遂には見付けたノコギリを、手近なものさえを、仕事のための、何かしらの高齢の労働者のための。
『君、外套を脱いだらどうですか』と助言したのは労働者だった。『コートは良いものだが、可哀想だ、こうも駄目にされては、ほら軽々と働くために』」
 подручногоはそういう人物を指しているらしい。言われて見れば生格の顔して対格の場所にいる。なるほどー。
 訳すならアシスタントってところだが、しかしここでカタカナはイヤだなぁ……。
再び彼は他所へと追い払われた。だが遂には見付けたノコギリと、更には仕事の補助人として高齢の労働者までをも。
『君、外套を脱いではどうですか』 そう助言したのは、高齢の労働者だった。『コートは良いものだけれど、こうも駄目にされては可哀想だし、ほら動きやすくなる』
 コートを死守しようとするイヴァン・イヴァノヴィッチに対して今まで誰も脱げよと助言しなかったから、てっきりコートを脱ぐと死ぬ季節なのかと思っていたが、どうもそうではないらしい。


– Боюсь, украдут, – сказал околоточный.

– Ну вот! – удивился старик. – Кому оно нужно. Тут, брат, граждане, а не воры…

– Рассказывай! – не поверил Иван Иванович, но пальто снял, сложил комочком изнанкой наверх и осторожно положил на подоконник, так, чтобы оставалось на виду.

メモ
украсть(←украдут:現在形、三人称単数形):что к кого…を…から盗む[掠める];что盗む、くすねる(完了体)
 →不完了体:красть, воровать
вор(←воры:複数形):泥棒、盗人
рассказывать(←рассказывай:命令形):話す、物語る(不完了体)
 →完了体:рассказать
рассказывай(те):(口)嘘をつけ、ご冗談でしょう
поверить(←поверил:過去形、男性形):(正しい・真実だと)信じる、(長所・能力などを)信用する(完了体)
сложить(←сложил:過去形、男性形):(ある形に)積み上げる、積む;加算する、足す;(紙・布などを)折りたたむ、折って作る、たたむ、窄める(完了体)
 →不完了体:складывать, слагать
комочек(←комочком:造格?):[小指]комок:(小さな)塊
изнанка(←изнанкой:造格):(織物・衣服などの)裏、裏側、内側
наверх:上へ、上の棚へ、(下から)表面へ
осторожно:用心深く、慎重に
положить(←положил:過去形、男性形):(物を横たえて)置く、寝かす(完了体)
 →不完了体:класть
на виду:с вид:見たところ、外見上

「『恐れているのです、盗まれることを』言ったのは警察官。
『なんと!』 驚いたのは老人。『誰かにそれは必要でしょう。でも、兄弟、皆さん、泥棒じゃない……』
『ご冗談を!』 信じてはいないイヴァン・イヴァノヴィッチは、しかしコートを脱いで、小さく丸めた裏表に、注意深く置いた窓台の上に、こう、外観上は残っている」
  оставалось на видуって良い表現ですよね(反語的表現)。
『怖いのです、盗まれるんじゃないかと』 言ったのは警察官。
『なんと!』 驚いたのは老人。『一体誰にそれが必要でしょうか? いいですか兄弟、紳士よ、泥棒はいない……』
『ご冗談を!』 信じられないイヴァン・イヴァノヴィッチは、しかしコートを脱ぐと、表裏にして小さく丸めると、注意深く窓台の上に置いた。いつだって視界の隅に入るように


Работа пошла легко, и все вокруг как-то посветлело, стало проще и понятнее. Попригляделся околоточный и к народу, и народ был все простой, такой, с каким он привык и умел обращаться: рабочие, какие-то мужики, полугоспода, приказчики из лавок. Были и женщины.

メモ
легко:軽々と、軽快に、軽く
как-то:[不定]どうやってか、なんとか;[不定]どうしてか、なんとなく、どうも
посветлеть(←посветлело:過去形、中性形):明るくなる、より明るくなる(完了体)
 →不完了体:светлеть
простой(←проще:比較級):単純な、簡単な、平易な;平凡な、ありふれた;(長尾)普通の
понятный(←понятнее:比較級):よく分かる、分かりやすい、明瞭な、話の通じ合う;理解できる、もっともな
поприглядеться(←попригляделся:過去形、男性形)
 →приглядеться:じっと見つめる、目を凝らす、観察する、よく調べる;見慣れる、(観察・研究して)…に慣れる;(口)(目が)暗闇に慣れる;(口)見飽きる、ウンザリする(完了体)
  →不完了体:приглядываться
 →по:[接頭辞](ふつう接頭辞のついた完了体動詞に付して)”少し”、”徐々に”の意
привыкнуть(←привык:過去形、男性形):…する習慣がつく、…の癖がある;習熟する;慣れる、馴染む、親しむ(完了体)
 →不完了体:привыкать
обращаться:(ある方向に)向く、振り向く、振り返る;(目・視線が)向く、注ぐ;(感情・行動などが)向く、傾く、集中する(不完了体)
 →完了体:обратиться
мужик(←мужики:複数形):(廃)百姓、農夫、農民
полугоспода
 →господин(←господа:複数形):領主、主人;(貴族・上流階級の)人、紳士、淑女
 →полу:[接頭辞](名詞の主格と結合して)”大きさや性質が半分である事物”を表す名詞を作る
приказчик(←приказчики;複数形):手代、番頭、店員、売り子
лавка(←лавок:複数形、生格):小さな店

「仕事は軽々と進み、周囲の全てがなんとなく明るくなった、より単純に明瞭になった。徐々に観察していった警察官は人々のことを、人々は全く平凡で、こんな風に、如何に彼が馴染んで集中することができた:労働者、どこかの農夫、半貴族、小店の売り子。女性達もいた」
 訳が分からなかった時は全てが理解不能で自分に刺刺しい闇の世界のように思えるけれど、ささいなキッカケから理解が進むと全てが分かりやすくて自分に優しい明るい世界のように思える。
 「あるある」な感覚なのだが、しかし私の力では美しい表現に出来ないぞ、これ。
 ちなみにполугосподаとは「出は貧しいが中流以上の生活をしている者」を意味するらしい。一体日本語に訳すなら何なんだ……。
仕事は軽々と進み、周囲の全てがなんとなく明るくなり、ありふれた理解可能なものとなった。警察官は参加者たちを観察した。参加者たちは全く平凡だった、彼が慣れることが出来るほどに。彼が見たのは、労働者、どこかの百姓、成り上がりの小領主、小店の売り子たちであった。女性もいた


– Смотри-ка, – сказал Иван Иванович, – и бабы тут. Тоже работают.

– А отчего же им не работать. Всяк должен свою лепту.

– Выдрать бы их за эту лепту, вот что.

– Ну, и гадюка же ты! – удивился рабочий. – Тебе-то они чем помешали? А еще скажешь, позову ребят, они тебя научат, в лучшем виде все поймешь.

– Граждане, а деретесь, – упавшим голосом возразил околоточный.

– Мы-то граждане, а ты-то сволочь. Вас да не бить, кого же тогда бить?

メモ
баба(←бабы:複数形):(廃)(既婚の)農婦、百姓女、教養の無い女;(俗)(ふつう蔑)女、あま
отчего:[疑問][関係]なぜ、どうして;(文)そのため、そのせいで
всяк:(廃)(俗)[定][短尾]всякий:全ての、あらゆる;(主格のみ)全ての人、あらゆる人
лепта(←лепту.:造格):応分の寄付、寄進、貢献
выдрать:(口)引き裂く、むしり取る、破り取る(完了体)
 →不完了体:выдирать
гадюка:クサリヘビ(マムシに似た毒蛇);(俗)(罵)マムシみたいな奴
помешать(←помешали:過去形、複数形):кому-чему妨げる、邪魔する(完了体)
 →不完了体:помашать
скажешь!(скажете!):(俗)(不同意・軽蔑を表して)まさか、とんでもない、よくもそんなことが言えたもんだ
позвать(←позову:現在形、一人称単数形):кого-чтоしばらく呼びかける(完了体)
 →不完了体:звать
ребята(←ребят:対格):(口)若者達、(呼びかけとして)君たち、諸君
научить(←научат:現在形、三人称複数形):教える、習わせる;(口)助言する;分からせる、納得させる(完了体)
 →不完了体:научать, учить
драться(←деретесь:現在形、二人称複数形):殴り合う、喧嘩をする;(口)殴る、打つ(不完了体)
упавший(←упавшим:造格):能動形容分詞
 ←упасть:落ちる、落下する;倒れる、転倒する;(衣服・髪などが)垂れる、下がる、ずり落ちる(完了体)
  →不完了体:падать
возразить(←возразил:過去形、男性形):反対する、異議を唱える、反論する(完了体)
 →不完了体:возражать
сволочь:[集合](廃)(俗)下種、下人、下層階級;[集合](粗)ならず者、ごろつきども、悪党

「『ご覧なさい』、言ったのはイヴァン・イヴァノヴィッチ、『百姓女があそこに。(彼女たちも)また働いている』
『だが一体どうして彼らは働かないのだろうか。全ての人は自分の貢献をしなければならない』
『毟り取るんだ彼らをこの貢献から、まさにそうだ』
『なんだって、マムシみたいな奴だなアンタは!』驚いたのは労働者。『アンタを彼らがどう邪魔したね? よくもまぁそんなことが言えたもんだ、若者達を呼んで、彼らにあなたを納得させよう、より良い外観を理解するだろう』
『国民よ、だが貴方たちは喧嘩をする』 声を落として警察官は異議を唱えた。
『私たちは都会人、だが君はごろつきさ。あなたを殴らずに、誰をその時に殴るんだ?』」
 マムシは結構なクラスの悪口らしい。日本語にすると、うーん。どう訳せば良いんだろうね。
『見て下さいよ』 言ったのはイヴァン・イヴァノヴィッチ、『女までいる。また働いている』
『働かないことがありましょうか。全ての人が自身のなし得る貢献をしなければならないのです』
『彼らをその貢献から毟り取るんだよ』
『なんだって、マムシみたいなヤツだなアンタは!』 労働者は驚いた。『彼らがアンタの邪魔をしたかね? これ以上言うのなら、若い仲間を呼んで、彼らに説得させようか。全くもって良く理解できるようになるだろうよ』
『貴方、つまり殴るんでしょう』 声を落として反対したのは警察官だった。
『我々は一端の人間だが、あなたは下種だ。そのあなたを殴らないのに、一体誰を殴りましょうか?』


И опять стало скучно и беспокойно. Невдалеке стоял Петров и искоса наблюдал, и все кругом было враждебное, злое, обидное в своей веселости. Еще вчера он был лучше их всех и каждому мог дать по морде, а сегодня они считают себя лучше, а сами грязные, оборванные, подлецы. Шагах в пятидесяти у лавки стоял лавочник, толстый, седой, и, заметив его, Иван Иванович осклабился и закивал ему головой: первый, наконец, хороший человек.

メモ
скучно:退屈に、退屈そうに、物憂げに;[無人述](場所などが)つまらない、所在ない、退屈だ
беспокойно:[無人述]騒々しい、うるさい;[無人述]居心地が悪い、不安だ、落ち着かない
невдалеке:近所に、近くに;(廃)近い将来に
искоса:横目で、流し目で
наблюдать(←наблюдал:過去形、男性形):注意して見る、見守る(不完了体)
враждебный(←враждебное:中性形):敵意のある、憎悪している、敵対的な
обидный(←обидное:中性形):侮辱的な、無礼な、気に障るような
веселость(←веселости:生格):陽気さ、快活さ、楽しい気分
морда(←морде:与格):(動物の)顔、鼻つら;(俗)(罵)(人の)面、醜い顔、不細工な顔の人
грязный(←грязные:複数形):泥だらけの、ぬかった、泥の付いた、汚れた、汚い
оборванный(←оборванные:複数形):(衣服が)破れた、ぼろぼろの、(人が)ぼろを着た
подлец(←подлецы:複数形):卑劣漢、下司;(口)(罵)下司野郎、ろくでなし
лавочник:(廃)小売店主;小売店の売り子
толстый:厚い、厚みのある、分厚い、枚数の多い;太い
седой:(髪の毛が)白くなった、白髪の
заметив:副分詞
 ←заметить:目に留める、認める、気付く、見付ける、見て取る(完了体)
  →不完了体:замечать
осклабиться(←осклабился:過去形、男性形):笑顔になる、顔をほころばせる(完了体)
 →不完了体:осклабляться
закивать(←закивал:過去形):[始発](完了体)
 →кивать:(挨拶・同意・賛同のしるしとして)頷く、会釈する;頭を動かして指し示す(不完了体)
  →完了体:кивнуть

「そして再び所在なく居心地悪くなった。近くのペトロフは横目で見ていたし、周囲の全てが敵意と悪意と侮辱とがその陽気さの中にあった。昨日は彼はここの誰よりも素晴らしい存在で、どの面だって殴ることが出来たのに、一方で今日は彼らは彼ら自分こそが素晴らしいと思っているのだ、自身は泥だらけのボロを着た下司なのに。五十歩先の小さな店に売り子がいた、太った白髪の、そして彼を見てイヴァン・イヴァノヴィッチは顔をほころばせて頭を振った:最初の、遂に、良い人だ」
 хорошийなぁ、うーん。良い/悪いって日本語では結構重みを持つワードだけど、ロシア語だとそうでもないみたいだよなぁ。
そして再び居場所なく居心地悪くなった。近くのペトロフが横目で見張っていたし、周囲のあらゆつものがその陽気さの中に敵意と悪意と侮辱とを抱いていた。昨日は彼がここの誰よりも上位の存在で、どの面だって殴ることが出来たのに、今日は彼らの方が自分たちの方が上位だと思っているのだ。泥だらけのボロを着た下司なのに。五十歩先の小店に太った白髪の売り子がいた。彼を見てイヴァン・イヴァノヴィッチは顔をほころばせると、首を振った。初めての、遂に見付けたのだ、普通の人を


Околоточный часто забегал к нему в магазин поговорить по телефону, знал его и понимал, что и ему теперь противно смотреть на это безобразие. И действительно, лавочник строго и внимательно глядел на выраставшую баррикаду, потом неодобрительно закачал головой и скрылся в дверях.

メモ 
забегать(←забегал:過去形、男性形):駆け込む、走って入る(不完了体)
 →完了体:забежать
поговорить:(少し・暫く)話をする、話し合う、相談する(完了体)
противно:嫌で、不快で、たまらなく;[無人述]嫌だ、たまらない
безобразие:(外見の)醜さ、見にくい容貌、不格好、奇形
действительно:本当に、実際に;[挿入語]確かに
внимательно:注意して、注意深く、念入りに;親身に、丁重に
выраставший(←выраставшую:女性形、対格):能動形容分詞過去
 ←вырастать:(人・動物・植物の丈が)伸びる、成長する、大きくなる(不完了体)
  →完了体:вырасти
неодобрительно:不賛成である、否定的である、非難するところの
закачать(←закачал:過去形、男性形):[始発](完了体)
 ←качать:揺り動かす、揺さぶる(不完了体)
  →完了体、一回:качнуть
скрыться(←скрылся:過去形、男性形):隠れる;こっそり逃げる、身を隠す、行方をくらます;見えなくなる(完了体)
 →不完了体:скрываться

「警察官はしばしば駆け込んだ彼ところに店へと電話で相談するために、彼を見て理解した、彼にとっても嫌なのだ見ることはこの醜いものを。実際には、売り子は厳しく注意深く眺めていた成長したバリケードを、続いて否定的に頭を振り始め、戸口に隠れた」
 イヴァン・イヴァノヴィッチ、勘違いするの巻。
警察官は電話を掛けるためにしばしば彼の店に駆け込んだものだった。その彼を見て理解した。彼に取ってもこの醜いものを見るのは不愉快なのだと。実際の所は、売り子は成長したバリケードを厳しく注意深く眺めていたのであり、続いて否定的に頭を振ると戸口に消えた


– Ага! – сказал околоточный.

– Ты что?

– Ничего, так. Рано вы в граждане записались.

– Ты опять?

メモ
рано:(時刻が)早く
записаться(←записались:過去形、複数形):加入する、登録する、予約する(完了体)
 →不完了体:записываться

『なるほど!』と言ったのは警察官。
『なんだって?』
『なんでもないさ。早々にあなたは紳士として登録されたよ』
『またなんだって?』
 Рано вы в граждане записались.の意味が分からん。





 イヴァン・イヴァノヴィッチの楽しい(?)捕虜生活の始まり始まり。
 

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